ミイラから現代のサプリまで――プロポリスが人類と歩んできた数千年の物語
古代エジプトでミイラを作るとき、遺体が腐らないようにさまざまな処置が施されていましたが、そのなかにプロポリスが使われていたという記録が残っています。「死者を永遠に保存する」ための材料に選ばれたということは、当時の人々がすでにプロポリスの強い抗菌・防腐作用を経験的に知っていた証拠といえるでしょう。
でも考えてみると、これって当たり前といえば当たり前なんです。プロポリスはミツバチが巣を外敵や菌から守るために作り出すもの。自然界では「ミツバチの消毒液」とも呼べる存在で、巣の入り口を塗り固めたり、侵入した外敵の遺体を包んで腐敗を防いだりするのに使われます。人間がその力に気づいて活用し始めたのは、ある意味でミツバチから学んだ知恵だったのかもしれません。
古代ギリシャ・ローマ時代――"プロポリス"という名前が生まれた
「プロポリス(Propolis)」という言葉自体が古代ギリシャ語に由来しています。「プロ(Pro)=前・守る」「ポリス(Polis)=都市・集落」を合わせた造語で、直訳すると「都市の守り」。ミツバチの巣を都市に見立てて、その防衛物質に名前をつけたわけです。ネーミングセンスが素敵ですよね。
古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、傷口や潰瘍の処置にプロポリスを用いたと伝えられています。古代ローマでも軍の遠征にプロポリスが携行されたという記録があり、戦場での外傷処置に活用されていたようです。現代でいえばさしずめ「携帯できる消毒薬」といったところでしょうか。遠征先で薬が手に入らない状況でも、プロポリスがあれば傷の感染を抑えられる――それは兵士にとってかなり心強い存在だったはずです。
中世ヨーロッパ――民間療法の定番へ
中世ヨーロッパでは、薬学や医学の知識の多くが修道院を中心に継承されていました。修道院ではミツバチの飼育も盛んに行われており、蜜蝋やハチミツとともにプロポリスも修道士たちの医療実践に組み込まれていきます。
喉の痛みや口内炎、皮膚の炎症などに対して、プロポリスを溶かした液体を患部に塗ったり、含嗽に使ったりする方法が各地で伝えられました。民間療法として農村部にも広まり、「ハチの薬」として家庭常備薬的な位置づけで使われていたようです。
17〜18世紀――楽器職人とプロポリス
少し意外なところでは、17〜18世紀のヨーロッパで弦楽器の製作にプロポリスが使われていた可能性が指摘されています。ストラディバリウスをはじめとするヴァイオリン名器の表面仕上げにプロポリスが含まれていたという研究報告があり、楽器の音色を豊かにする「秘密の材料」のひとつだったのではないかという説があります。抗菌・防腐だけでなく、木材の保護や音響特性への影響まで活用されていたとしたら、プロポリスの奥深さをあらためて感じますね。
20世紀以降――科学的な研究が始まる
長らく「経験則」ベースで使われてきたプロポリスですが、20世紀に入ると成分分析の技術が発達し、科学的なアプローチが本格化します。フラボノイドやアルテピリンCなどの機能性成分が同定され、抗菌・抗酸化・抗炎症といった特性が少しずつ解明されていきました。
特に1970〜80年代以降、旧東欧圏(旧ソ連・ポーランド・ルーマニアなど)で研究が活発化。民間療法として長年親しまれてきたプロポリスが、学術的にも注目を集めるようになっていきます。
日本でプロポリスが広く知られるようになったのは、主に1980〜90年代。健康食品ブームの波に乗って紹介され、特にブラジル産のものが「グリーンプロポリス」として注目を集めました。ブラジルのミナスジェライス州などの高原地帯に自生するバッカリスという植物を蜜源とするこのプロポリスは、アルテピリンCという成分を豊富に含む点が特徴的で、東欧産や国内産とは異なる独自の成分プロファイルを持っています。
数千年を経て、いまも変わらないもの
古代エジプトのミイラ職人が経験的に頼りにしていた力を、現代の研究者が科学の言葉で解き明かしつつある――そう考えると、プロポリスって本当にロマンのある素材だと思いませんか。
使われ方こそ時代とともに変わってきましたが、「ミツバチが巣を守るために作り出す、天然の機能性物質」という本質はずっと変わっていません。私たちがブラジルプロポリスをお届けしているのも、その数千年の歴史の、ほんの一ページを担っているということかもしれないな、と改めて感じます。
